採択学生の活躍(森 友里歌様)

採択学生の活躍

【プロフィール】

福岡県筑紫野市出身、1993年生まれ、学位は博士(工学)である。研究分野は建築史、意匠である。北九州市立大学次世代研究者挑戦的研究プログラム「地域で育て地域を興す博士後期プログラム」(以下、プログラムという。)採択期間は202112月から20243月となる。現在は、和歌山大学システム工学部助教として在職中。

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https://researchmap.jp/6324

 

【学歴】

20193月北九州市立大学国際環境工学部建築デザイン学科卒業

20213月北九州市立大学大学院国際環境工学研究科環境工学専攻建築デザインコース博士課程前期修了

20243月北九州市立大学大学院国際環境工学研究科環境工学専攻建築デザインコース博士課程後期修了

Q1.プログラムを応募するきっかけを教えてください。

博士後期課程に進学した際にプログラムがスタートすることを伺い、担当教員の先生からの勧めもあり応募しました。また博士後期課程での研究活動以外にも自分のキャリアについて幅広い挑戦をしたかったため、グローバルで活躍できる研究者を目指しながらも地域とも連携できる本プログラムに興味がわき応募したきっかけとなりました。

 

Q2.プログラムに採択されたことで、研究費を個人として執行することができるようになりました。それをどのように活用されましたか?

研究費として必要な設備備品や参考文献の購入、またアメリカへの現地調査や学会発表の渡航費などに活用しました。自分の裁量で研究費を執行できることによって研究活動がより円滑になり、フレキシブルに活用することができました。プログラムによる研究費のサポートにより、自身の研究活動を大きく前進させることができたと感じています。

 

Q3.プログラムの特色として、地域とのつながりが掲げられています。採択期間の活動のなかで、つながりが得られたエピソードがあれば教えてください。

採択期間中にNPO北九州ビオトープ・ネットワーク研究会と北九州市立美術館にてインターンを経験させていただきました。NPOでは地域の竹林保全活動に取り組み、地域の方々と連携し具体的なアクションを起こすことや、また環境教育に関する企画を一緒に考案するなど、地域における持続可能な社会を目指した活動を行うことでつながりを感じました。

美術館ではタイ人アーティスト招聘による『旦過市場をモチーフしたアート・イン・レジデンス事業』というプロジェクトに携わりました。変わりゆく旦過市場の歴史や人々の思いを「街の記憶」としてアート作品を制作するアーティスト活動のサポートを行いました。アーティストの取材やインタビュー等に同行し通訳などを務めました。活動を通じて旦過市場の再整備計画が進むうえでの地域の方々の思いを直接お聞きすることができ、非常に貴重な体験となりました。

これらの活動を通じて、地域課題に対する実践的な関わりの重要性や地域の方々との信頼関係、ネットワークの構築がいかに持続可能な社会や文化の継承にとって大切かを体感しました。今後もこの経験を生かし、地域に根ざした活動を積極的に展開していきたいと考えています。

Q4.プログラムを通じて、学会発表等の得られた経験があれば教えてください。

プログラム期間中に、様々な発表の機会を得ることができました。研究発表としては国際会議で発表を行い、建築意匠論に関する研究の成果を発信するとともに、多様な視点からのフィードバックを得る貴重な経験となりました。この経験を通して、自身の研究がどのように位置づけられるのかを客観的に見つめ直すきっかけとなり、研究の方向性や社会的意義を再認識することができたと感じています。また国際会議で思いがけずに知り合うことができた研究者の方々とのコネクションも、現地参加ならではの特別な経験となりました。

他にもNGO CSW66 Parallel Event(国連女性の地位委員会パラレルイベント)や第34回アジア女性会議等においても発表の機会をいただきました。これらの場では、NPOでの環境保全活動やジェンダー平等に関する発表を行い、国際的な視野と実践的な視点の両方を意識しながら、積極的に発信と連携を続けていく重要性を学ぶことができました。

Q5.現在和歌山大学システム工学部に在職されていますが、今後の展望をお聞かせください。

和歌山大学システム工学部では建築・ランドスケープメジャーにおける製図演習系授業や卒論及び修論の指導を行っています。現職では建築意匠だけではなく、まちづくりやランドスケープなどの知識も必要とするため、毎日勉強することも多いですが、新しい発見や気付きもあり充実しています。また大阪や関西地域での研究活動が多く、改めて関西地方の建築や都市計画の歴史について調査を通じて知ることができ、新たな研究テーマにも取り組んでいます。

専門である建築意匠の研究は引き続き行いながらも、建築物の保存や改修そしてそれらが創り出す街並みといった分野にも関心があるため、建築士の資格を活用しながら研究と実務に励む予定です。研究の分野においてはこれまで築いてきたネットワークも活かしながら国内外場所を問わずグローバルに活躍できる研究者となるのが目標です。一方で育ってきた福岡や、そして今ご縁のある和歌山においても学んできたことを活かしながら関わっていきたいと考えています。建築設計や都市計画に関する研究活動とリンクした実践的な社会貢献を行うことを今後の展望としています。